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健康のためのインテリア

尾田 恵 氏
一般社団法人日本インテリア健康学協会 代表理事

より快適な空間になるように、主に住空間のインテリア計画をする「インテリアコーディネーター」という仕事がある。壁紙、床材などの内装材、家具やカーテン、小物までそこに住む人の好みに合わせて商品を選び配置するのがインテリアコーディネーターの仕事である。


そのインテリアコーディネーターが、「インテリア×医学」の連携をベースに、インテリア(生活環境)から健康を育むことの大切さを伝えていくことを目指して「一般社団法人 日本インテリア健康学協会(JIHSA)」を立ち上げ、2018年3月23日、最初のイベント「第1回『インテリア健康学』セミナー」を開催した。


一般社団法人 日本インテリア健康学協会(JIHSA)公式サイトはこちら→

片頭痛と光・音・香りの関係

片頭痛とは、頭の片方に発作的に起こる頭痛である。数秒ズキンとするような軽い症状の人から吐き気を伴う人までおり、ストレスやホルモンバランスの崩れにより頭部の血管が広がることが原因だと考えられている。(にっぽんの病院・編集部調べ)

片頭痛の有病率は20〜40代女性の約15〜20%と多く、頭痛発作は仕事や生活への支障度が高い。頭痛発作時は、光、音、臭いに対して過敏になりやすく、特に光については白い蛍光灯がつらく感じることが知られている。
そこで、医師と連携して照明環境を工夫し、薬に頼らず片頭痛の症状緩和につなげられないかと取り組んだのが「健康のためのインテリア」だという。

例えば照明の色は、昼光色(青白い、いわゆる蛍光灯色)、昼白色(昼間の太陽光に近い)、電球色(オレンジっぽい)の3つに大きく分けられる。実験では、白っぽい明かりは片頭痛を引き起こしやすく、電球色では片頭痛の起こる回数が減ったり症状が軽減されたりという臨床結果を得た。壁の色や家具の素材も刺激の少ないものに変えればさらに良い結果がえられることもわかった。こうした取り組みを通じて、照明だけに限らず、インテリアを工夫することが、様々な症状の緩和や健康増進につながる可能性があるのではないか、と考えた。

つまりそれが“インテリア健康学“である。


照明の色の違い。左から昼光色、昼白色、電球色。

この日のセミナーでは、尾田氏が“インテリア健康学”に基づいて実際に手掛けた事例も紹介された。


事例1:京都山科・マンションモデルルーム
「医療」と「インテリア」から考えた新しい提案、日本初のモデルルーム「サンクタス京都山科」。医師監修のもと片頭痛の症状を軽減する光・音・匂い過敏に配慮した、今までにない新しい住まいの考え方、インテリアを提案した事例。内装・家具・カーテン・照明、調光システムなど、デザイン監修/インテリアコーディネートした事例。


事例2:獨協医科大学看護料
「Active Care~医療とインテリア~」をテーマに、20代~40代の女性に多い片頭痛に優しい住環境を目指し、各個室のインテリア(照明・内装・色・素材)を細部まで「Active Care」仕様でコーディネートした事例。


事例3:レオグランデ枚方長尾モデルハウス「眠れる家の妻」 寝室の枕元には「次世代の灯り」と言われる有機EL照明(OLED)の優しい光。天井やベッドにもOLEDの間接照明。すべて調光仕様です。自然光に近く目に優しいOLEDとカラーコーディネートで眠りのための特別な寝室としてデザインした事例。

日本インテリア健康学協会の今後の活動

一般社団法人 日本インテリア健康学協会の代表理事・尾田氏のインテリアコーディネーターとしてのキャリアは20年以上。視聴者の家の問題点を匠が解決するというTV番組にも参加してきた。
高齢化が進み健康志向が高まる中、尾田氏は「ココロとカラダがともに健やかな環境がもっとも快適な空間である」という考えのもと、光・音・香り、3つの過敏症に配慮したインテリアを提案し、メーカー協力のもと照明器具を企画開発するなど、「アクティブ・ケア」というカタチになっている。


尾田氏が代表を務める株式会社菜インテリアスタイリングが企画開発した照明器具「アクティブケア ライティング」。 キャッチコピーは「カラダ」にやさしく「ステキ」。(大光電機株式会社より販売中)


一般社団法人日本インテリア健康学協会は、今後これまでの尾田氏の活動を広げつつ、インテリア健康学の普及とデザイナーの育成、医療分野との連携による臨床研究・学会発表等の活動を行っていく予定である。


セミナーで発表された、一般社団法人日本インテリア健康学協会の今後の活動


インテリアコーディネーターたちがよく口にする「インテリアの力」。

将来的には、インテリアコーディネーターがその「力」と「インテリア健康学の知識」をベースに、医療機関スタッフの一員として患者様にインテリア(生活環境)の改善ポイントをアドバイスするなど、症状の緩和や健康増進のために寄与する日が来ることを願い活動をしていくという。