<
トップ  >  コラムと連載  >  患者が見た医療施設のデザイン
患者が見た医療施設のデザイン
3.待ち時間とお薬の問題

【執筆者紹介】
岩崎義弘氏(執筆者)
株式会社PPnR 代表取締役

最終回は、医療の現場では携帯電話やスマートフォン、タブレット、PCなど電子機器の持ち込み禁止といった厳しいところも散見されますが、今回はIoT化によって改善される医療の負担について考えたいと思います。

待ち時間の問題

近年は、総合病院でも地域医療・かかりつけ医を推奨し、日常の通院は最寄りの医院、大きな検査や入院などは総合病院という流れにすることで、診療の混雑や長期入院を緩和する流れになっています。
基本的には予約患者優先ですが、それでも長時間待機することは珍しくありません。

そこで待機時間の緩和の対策を考えてみました。

1.医者の増員
2.患者数の制限
3.診察時間の短縮
4.かかりつけ医や地域医療の徹底
5.待合室の拡充
6.診察番号や待機予定時間のディスプレイ表示
7.IoTツールの導入

このうち1.~3.は、増え続ける患者さんを少ない医師が診察している状況では難しく、診察時間の短縮は診察ミスに繋がる恐れがあります。
4.は上記と関係し、地域によっては医師、医療施設の不足など、なかなか困難な状況です。
5.はスペースと予算に余裕のあるところは可能かもしれませんが、拡充にも限度がありますし、根本的な解決にはなりません。
6.はすでに導入されているところも多いですが、あくまで目安程度で、診察、会計まで待つことにかわりありません。
そんな中で最も期待できるのが「7.IoTツールの導入」です。

総合病院では予約していても1~2時間待ちは珍しくなく、混雑時には支払いでさらに1時間近く待ち、検査~診察~会計で午前中から昼過ぎまで病院内で過ごすこともあります。
待合室のスペースは限られているため広げることも難しく、パイプ椅子を廊下に並べているところもありますが、長時間椅子に座っていると、よけい体調を崩してしまいそうです。

そこで、解決策の1つとして携帯電話の番号などを事前に登録しておけば、診察の順番が来る2人ほど前(30分くらい前)にSMSで連絡が来るというのはどうでしょうか。
SMSは、スマホか携帯電話をお持ちであればメッセージを受け取れますから、ほぼ環境を問わず利用できます。携帯電話ショップではずいぶん前から利用されており、私が通う歯科医院でも導入されていて便利です。

最近は受付を済ませればスマホで「あと何人待ち」を確認できるシステムもあります。
こういうサービスを導入していただけると、院内のレストランや近隣の喫茶室でゆっくり待ったり、近所なら自宅へ戻って横になって待つこともできますから、心身への負担や混雑が減らせます。

お薬管理にIoT

医療のIoTで身近なものにお薬手帳アプリがあります。
複数の医療機関を利用する場合は特に、今服用している薬の情報や処方された日、内容などをすぐに参照して医師と話ができるため、大変重宝します。

ただ、多種多様なお薬手帳アプリが配信されており、実は利用者にとってはこれがちょっと悩みの種です。
調剤予約機能(*1)は便利でなのですが、薬局がそのアプリに対応していないとせっかくの機能が利用できません。
また、アプリで調剤予約していても、原本がないと薬を引き渡ししてもらえません。
(*1)一部のお薬手帳アプリに搭載されている機能で、処方箋の写真を薬局に送っておいて調剤予約ができる機能。薬局での調剤待ちの時間を短縮することが目的。

こういった問題を解決するには生体認証(指紋認証や顔認証など)を利用して、クラウドサービスとして処方箋や調剤の情報を一元管理するような、仕組みが必要だと思います。
2021年にはマイナンバーカードが保険証と連携するようで(*2)、同様に処方箋も連携させてマイナンバーカードだけで処方されるのが便利でいいのかもしれません。
マイナンバーカードと保険証に加え、各種証明書・手帳、処方箋が連携すれば、複数の薬局で不正に薬を入手するといったことも防げそうです。
(*2)【参考】 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針について(厚生労働省保険局)

薬に関してもうひとつ、2020年にはパソコンやスマホで薬剤師が離れた場所から薬の飲み方を説明する「遠隔服薬指導」が解禁になるという報道がありました。
利用者側にパソコンやスマホを使えるという条件はあるものの、薬局に行かなくても処方箋を受け取れ、服薬指導が受けられるようになれば、薬局に行く必要がなくなり高齢者や体の不自由な方の負担も減ると思います。

最後に

IoTの導入以前に未病予防など、患者さん自身の生活習慣に対する意識改革は最も重要なことです。
医療のIoT化は現場レベルでいろいろ進んでいるようですが、患者負担を減らすということではまだまだ改善の余地があると思います。
現在は医療だけではなく、福祉との連携も必要なので、より一層カルテや処方箋などの電子化を推し進めて利便性を図ると同時に、一人の患者さんが複数の医療や福祉サービスを利用するにあたって、間違いのないよう引き継ぎできることが理想です。
マイナンバーカードが保険証として利用できるということには賛否両論あると思いますが、日本の医療にとっては大きな一歩になることを期待しています。