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車椅子やストレッチャーにもやさしい視覚障がい者歩行誘導ソフトマット【歩導くん ガイドウェイ】

視覚障がい者を安全に目的地まで案内するためのガイド=誘導路といえば、凸凹のある黄色い点字マットを多くの人が思い浮かべるだろう。
ところが、形状も色もそうではない視覚障がい者用誘導用のマットがあるというので取材した。
医療施設にこそ設置してほしいという、その製品「歩導くん ガイドウェイ」について、製造販売元の錦城護謨株式会社でお話をうかがった。


▲「歩導くん ガイドウェイ」の設置例(陸前高田市の商業施設)


お話をうかがった方

小山健一
錦城護謨株式会社・ソーシャルイノベーション事業本部 バリアフリー推進課・課長 
山田敬宏
株式会社リプルエフェクト・代表取締役(デザインを担当)

「歩導くん ガイドウェイ」の特徴

「歩導くん ガイドウェイ」は、2016年度iFデザイン賞で「最優秀賞」(iFゴールドアワード)、German Design Award 2018で「Excellent Product Design」と「Public Design」の2カテゴリーで「Winner」、2019年「International Design Excellence Awards」でブロンズ賞をそれぞれ受賞した。

世界が評価している「歩導くん ガイドウェイ」の主な特徴は以下のとおり。

1.滑りにくい
ゴム製のマットの表面を滑らないように加工。水が滞留しにくいためより滑りにくい。

2.ガタガタしない
表面はほぼフラットで凹凸がない形状。両端はテーパーが施されており、段差は感じられない。


▲滑りにくい加工とテーパーで安全性を追求した

3.必要な情報を足裏から感じられる
裏側の加工によりシートの中心と端部の硬さに変化をつけ、進行方向を足裏と白杖の打感で感じられる。


▲「歩導くん ガイドウェイ」の裏面。細かい突起が施されている。

4.輝度差2.0を確保
輝度差が出やすい標準の6色に加え、施設の床色に応じたオリジナルカラーにも対応。
また、16×16のドットを使ってピクトグラムの印字も可能。


▲ピクトグラムの印字例

5.設置・移設が簡単
両面テープで床面に貼るタイプなので、専用工具や大がかりな施工工事が不要。撤去や移設も簡単に行える。

医療施設にオススメしたい理由

一般の施設はもちろんだが、医療施設にこそ導入してほしいと、山田氏はいう。
「病院は、車椅子やストレッチャー、点滴スタンドに加え、キャスター付のカートなどが多く行き来する施設です。それらの移動がスムーズになりますし、高齢者や患者さんのつまづきや転倒事故も減らせると思います。」


▲病院など医療施設で行きかうキャスター付のカートなど。
(左から①車椅子、②ストレッチャー、③点滴スタンド、④ナーシングカート、⑤救急カート、⑥与薬カート、⑦包帯交換車、⑧回診車、⑨ランドリーカート、⑩ベビーカー/いずれも3D医療施設デザイナーの収録素材)



▲錦城護謨社のショールームで行った簡単な実験の動画
右側が「歩導くん ガイドウェイ」、左側が一般的な屋内用の点字ブロック(誘導ブロック/線状ブロック)
キャスターの音と水の動きで、ガタガタ感の違いが分かる

また、小山氏は視覚障がい者の病室にも設置して欲しいという。
「病室にトイレがないと、視覚障がい者はナースコールで看護師さんを呼んで連れていってもらわないといけないそうなんです。
そういうときこそ、その経路に「歩導くん ガイドウェイ」を設置して欲しいですね。
トイレにひとりで行ければナースコールをしなくてよくなります。夜中も気兼ねなくトイレに行けるし、看護師さんの仕事も減らせる。
患者さんが退院したらはがして保管しておき、必要になればその部屋に設置する、そういう風に使っていただける製品です。」


▲病室からトイレまで誘導路を設置すると、ナースコールせずにいつでも一人でトイレに行ける

幅30センチ、スロープ傾斜3.5°、輝度差2.0以上の理由

視覚障がい者は、白杖(はくじょう)を左右に動かして誘導路を探りながら歩くそうだ。
幅30センチの理由は、白杖を無理なく振れる幅だという。JIS規格でも点字マットの幅は30cmとされている。


▲白杖を使った歩き方は人それぞれだが、
「片足を誘導路に乗せ、白杖を左右に動かしながら歩く方が多いそうです。」と小山氏。
足裏の感触と、白杖から伝わる床の感触や音の違いで、進行方向を見極めているそう。


端部の傾斜3.5°にも理由がある。
バリアフリー法では、室内の傾斜は1/12、屋外の傾斜は1/15を基準と定められており、それ以上の傾斜部分には手すりなどを設置すること、とされている。「歩導くん ガイドウェイ」のテーパー部分はそれらより緩やかな傾斜になっている。


▲各傾斜の比較(左)と、「歩導くん ガイドウェイ」のサイズ
(※右図の断面図は形状をわかりやすくするために描いたもので寸法どおりではありません)

さらに、山田氏は形状と同様に「歩導くん ガイドウェイ」の色にも配慮をしたという。
「点字ブロックは黄色が一般的ですが、おそらくアスファルトの上に設置することを想定した色だと思います。
また黄色は危険を知らせる色でもあるので、一般にもわかりやすく受け入れやすかった、というのも普及した理由かもしれません。」
しかし、大切なのはそこに誘導路があることを視認できることだという。
「視覚障がい者の8割程度は弱視(ロービジョン)者なのだそうです。
彼らは白杖や足裏から伝わる感覚だけでなく、誘導路を視認しながら歩くそうです。そのため彼らにとっては誘導路そのもののの色ではなく、床面との輝度差が重要なのです。
標準色を複数用意した理由はそこにあります。空間のデザインに違和感なく設置でき、床面との輝度差を確保できる6色にしました。」


▲「歩導くん ガイドウェイ」の標準6色。
設置時には空間のデザインを考慮し、どの色がよいか提案してくれる。
また、ブランドイメージや空間に合わせた特注色にも対応している(要相談)

今後について

「歩導くん ガイドウェイ」は、すでに福祉施設、役所、図書館、商業施設などに導入されているが、ほとんどの一般の人は視覚障がい者用誘導用のマットだとは気づいていないだろうと小山氏はいう。
「気付かれていないことで起こる問題は、誘導路の上に物を置いてしまうことくらいでしょうか。ですが、意識したい人、意識したいときにはわかるけれど、不要な人は特に何も感じないという空間が本当の意味のバリアフリーだと考えています。
とはいっても今後は、一般の方にも「歩導くん ガイドウェイ」の存在を知ってもらうために、認知活動も幅広く対応していきたいと考えています」と語る。

今後の目標として、ふたりは2020年のオリンピック・パラリンピックの会場への導入と2025年大阪万博会場の導入をあげた。特に、大阪万博会場に導入できるよう、積極的に活動していきたいという。
パビリオンに設置された「歩導くん ガイドウェイ」は会期終了後も廃棄せず、全国の公共施設などへ寄付してもらえれば、バリアフリー化の一助になるのではと考えている。


▲錦城護謨株式会社・小山氏(右)とデザインを担当した株式会社リプルエフェクト・山田氏(左)

製品についてお問い合わせ

下記、錦城護謨株式会社の製品専用のサイトよりお問い合わせください。
http://guideway.jp