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医学的視点で医療施設・介護施設のインテリアを考える

医療施設とインテリアの力(全6回)

第1回 医療施設とインテリアの力

インテリアには、人の健康に役立つ「力」がある。
その可能性に気づいたのは今から約10年前、「光」をテーマにしたあるパネルディスカッションに登壇させていただいたことがきっかけでした。
神経内科の医師から「片頭痛は住まいの光環境によって症状が緩和される」という言葉を聞き、照明にまつわる過去の不思議な現場経験が頭の中を駆け巡りました。担当したお客様からの「天井に一切照明をつけたくない」という要望に隠された悩みの本質に、ようやく気づいたのです。
照明はモノを照らすと同時に人にも近い存在で、設置場所や光源の選び方次第では光刺激になり、眩しくて辛いことがある。
それは、照明計画を考える上で今までにない視点でした。


従来のインテリアは、トレンドを追い、空間の雰囲気や印象を高める見た目重視の存在として捉えられてきました。
しかし、光(照明)による頭痛の誘引や光・臭・音過敏の存在、色、パターン、家具、植栽など、あらゆるインテリアに「医療」の視点を融合すると「インテリア=生活環境」づくりの“新たな役割”が見えました。
インテリアは見た目だけでなく、人への健康影響も考えなくてはならない。

人の健康を第一に考えた、カラダとココロのためのインテリア「ACTIVE CARE®」(アクティブ・ケア)のメソッドはここから生まれたのです。


その後、様々な実践、研究、学会発表、商品開発などにも取り組み、2018年一般社団法人日本インテリア健康学協会(JIHSA)を設立しました。現在は大学院で公衆衛生学を学びながら、インテリアと医療の可能性への探求を続けています。


▲日本健康科学学会第35回学術大会(2019年9月)
医療とインテリア「アクティブ・ケア」の事例を発表
JIHSAセミナーのレポート記事へ⇒


最近、さまざまな場所で「○○らしくないインテリア」が増えています。
「オフィスらしくないオフィス」や「施設らしくない施設」など、整然と統一されたかっこよさやスタイルより、人への優しさが重要視される時代になりました。
それはインテリア的にみると、「わが家」を感じさせるほっとする空間、よい意味での「不揃いの美」を持つインテリアです。


▲総合福祉施設「サンタフェガーデンヒルズ」(東京大田区)のスタッフ休憩室。
リニューアル後、利用者が大幅に増えている


居場所が変わると人は変わるように、空間が変われば人が感じる空気も変わります。
実際、私がインテリアを担当したクリニックの事例では、リニューアル後のアンケートに「患者の立場にたって考えてくれた気持ちの良い環境です」と嬉しいお言葉をいただきました。
インテリアには、人の優しさや想いを伝える“力”もあると感じています。



▲「アクティブ・ケア」によるクリニックのリニューアル事例(上:リニューアル前/下:リニューアル後)
光過敏ケアの観点から、照明と内装色の相乗効果で温かみのある空間に


医療施設には多くの空間があり、それぞれに多種多様な役割をもっています。
全ては重要な役割を担う場所だからこそ、機能的な側面以外に求められる要素があるのではないでしょうか。
カラダやココロをケアし、想いも伝えるインテリアには、これからの病院施設を支える「力」があると考えています。


執筆者紹介

尾田 恵
一般社団法人 日本インテリア健康学協会/株式会社 菜インテリアスタイリング 代表

インテリアデザイナー。大手不動産会社、インテリア事務所勤務を経て、2007年菜インテリアスタイリングを設立。住宅、福祉施設、TV番組など様々なインテリアコーディネート・デザイン、商品開発、情報発信などに携わる。幅広い活動で培った知識・スキルを活かし、インテリアと医療を融合したプロジェクトを基とする、身体と心の健康を目指したインテリア・メソッド「Active Care®」(アクティブ・ケア)を提唱。
2018年「日本インテリア健康学協会(JIHSA)」を設立。医療機関との共同研究にも参画し、新たなインテリアの可能性に向け活動を進めている。


公益社団法人日本インテリアデザイナー協会(JID) 正会員
経済産業省 JAPAN DESIGNERS 登録
帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 在学
照明学会会員 日本頭痛学会会員