Read Article

【眼科】を作る

これまで【眼科】を数多く手がけてきた徳永修一郎氏(株式会社リィツメディカル)と大内孝夫氏(株式会社GEN設計 代表)に、眼科設計・眼科開業についてお話をうかがった。

医療機器の影響が大きい眼科設計

医療施設の設計において、医療機器の利用目的などを整理し、特に検査が多い眼科においては、明室・暗室など適正な配置を行う。

にっぽんの【眼科】は検査機器を検査室に集めることで、機器の数と検査室のスペースを節約するよう工夫してきた。人間ドックや眼科でいろんな検査機器の前へ次々移動する、という経験をしたことのある人は多いはず。検査によっては暗室に移動することもある。
一方、フランスなどのヨーロッパの【眼科】は診察室内に検査機器を置き、患者は特殊な検査以外は移動しなくてもいい設えが多かった。患者サービスを考えるとフランス式の【眼科】は理想ではある。しかし、そのフランスにも、にっぽんの【眼科】のような考えも多くなったという。

ところが、1台で複数の検査ができる機器がでてきた。これまで暗室でしかできなかった検査が明室でできる検査機器も登場した。
それを受けて大内氏は
「今後、眼科は、検査室の機能も持った半個室の診察室、ちょうど歯科のブースのような形になっていくでしょう。特殊な検査や手術は別として、患者は受付のあと最初に通されたブースの中で、検査も診察も治療も受けられるという形。今後、ITなどの発達によって結果として個室タイプの設計に近づくのかもしれません。」という。

変えらない視力検査

一方、検査機器が進歩しても、視力検査は今のままのカタチは変えられない、と徳永氏はいう。
「視力検査は視力表から5~6m離れたところから行うのがよいとされています。
2、3mで測定できる視力表は数値的には合致するのかもしれませんが、大切なのは対象物との距離だと考えます。」というのがお二人共通の考えだ。

テナントクリニックなど広さに制限がある場合には、視力検査のスペースは悩みの種だそうで、これまでいろいろな方法を検討したという。その例を2つご紹介いただいた。どちらも問題があり、実現しなかった案である。

没案① 空中利用案(40年くらい前までは多く作られた)
他の検査の邪魔にならない、空中を利用して視力検査を行うというもの。
没になった理由は、車椅子や段差を上りにくい患者が利用できないのと、何より段上は危険であり、視力検査のためだけにスタッフが必要になること、である。

没案①「空中利用案」

 

没案② クロス検査案
並列よりも省スペースで同時に視力検査が行えるので、一見よさげではあるが、患者の視力によっては検査表との距離を縮める(患者が検査表に近づく)時、交差する側の患者が検査できなくなる。
没の理由はその一点。(但し、患者数の多い眼科では採用されることが多い)

没案②「クロス検査案」

 

他との差別化のため『構想』が重要

最後に医療施設をつくるときに何が重要かをうかがった。

下記「構想から設計・工事の流れ」のチャートは、株式会社GEN設計が、医療施設に限らず施主に提示する建築工事の標準的な流れを示したものである。大内氏は、「この中で、一番重要なのは『構想』」だという。

診療所開業は基本的には届け出制で、基準に合致していれば保健所は開院を認める。東京都心は圧倒的に人口が多いので開業しやすいが、当然過剰な科目もあり、眼科はその中のひとつ。

少し前までは足りないとされていた埼玉県や茨城県はここ数年開院ラッシュで、東京と同様に飽和状態になりつつあるという。

『構想』が一番大事という理由はそこにあるのだ。飽和状態の中で勝つための構想である。

最新の機器を導入している、医師に輝かしい経歴がある、といった理由だけでは患者は継続して来てはくれない。スタッフが患者を気持ちよく迎えてくれる、適切な診察・治療を受けられる、は当たり前。
例えば、”状況によっては手術が受けられる”といった医療施設の”ウリ”が必要だというのだ。
「患者さんは病院をインターネットで調べて選びます。高齢の方が患者さんでもそのご家族がインターネットで調べるので『Webサイトがない』という理由だけで、まず候補から外されてしまいます。」
眼科に限らず、今はそんな時代なのだ。
そういう中で、医療施設の設計者は、医療施設側の意向を踏まえるだけでなく、将来的な展開も考えて提案をしていかなければならない。

大内氏は、以前「ホテルのようなエントランス、待合にも高級な家具を置いた【眼科】を作りたい」という依頼を受けたことがあるという。
一般の患者が診察を受ける眼科の施設とは別に、多焦点レンズを使った手術や最新機器での白内障手術など、保険適応外の高額な自由診療を希望する患者のためだけの特別な施設を望む先生もおられる。

「高級マンションが1軒買えるくらいの最新機器を導入しているクリニック、保険適用外でも片眼数十万円の手術(*)を受ける患者が通うクリニック、Webサイトもなく広告をださなくても患者の紹介やクチコミだけで患者が絶えないクリニックは、一般の病院と差別化を図っています。」(*2019年3月現在

もちろん、そんな眼科ばかりになることはないが、これもまた『構想』。そこを最初にはっきりさせておくことが重要なのだ。(取材:2019年2月7日・編集部)

「大内氏が代表を務める株式会社GEN設計のホームページには、同社が手掛けた医院・病院の実績がずらりと紹介されている。そしてその9割が眼科の事案。

 

 

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a comment

*
*
* (公開されません)

Return Top