社会医療法人 真美会 中野こども病院は、1966年に開業した日本で最初の民間小児病院。
2015年7月にリニューアルした現在の同病院を取材した。
お話をうかがった方
社会医療法人 真美会 中野こども病院
理事長 木野 稔 氏
企画室 認定ファシリティマネジャー 伊豆 武之 氏
看護部 統括師長 森本 典子 氏
中野こども病院は、1966年、大阪市内に日本で最初の民間小児病院として開業。30床からのスタートだったが、現在は79床、医療スタッフ180名+保育士20名という大所帯になっている。
2018年の入院患者は3,700名、救急車は年間2,000台を超える病院である。
現在の病院施設は、2015年7月に、開院した場所に新設したもの。
施設の老朽化を理由に、2008年頃から建て替えの計画をはじめた。
ゼネコン3社によるコンペで設計・施工会社を決定。ゼネコン決定後、院内スタッフによる建て替えプロジェクトを発足させた。
新館が2013年に、続けて本館が2015年1月に完成、新館の改修工事を経て2015年7月グランドオープンを迎えた。
建設中も医療業務を続けるために、時期をずらして2館を建設した。
本館はそのままに、道路を挟んだ向かい側の敷地に新館の建設をスタート、2013年新館が完成するとそこに本館機能を移動して本館の取り壊しと建設を、2015年に新本館完成後、新館内に移動していた本館機能を新本館へ戻し、同時に新館の改修と渡り廊下の設置を経て、2015年7月、グランドオープンを迎えた。
中野こども病院は、設計・施工ともに大成建設が担当した。
他社プランにはとんがり屋根やキャラクターの描かれた壁など楽しげなデザインが盛り込まれていたが、「『いつも何がこどもにとって一番大切か』を考えて医療を提供します」という病院の理念に基づき、また周辺の住宅街になじむような外観のもっともシンプルなプランに決定しました。」と木野理事長。
病院としては低層の「3階建て」は、第2種中高層住居専用地域であることが理由。
全員が小児科に関わるスタッフなので、小児科の思いだけで作れたのはやりやすかったともいう。
「今思うと、プロジェクトの最大の難関は住民説明会だったかもしれません。」と木野理事長はいう。
「建設前の説明会には地域の方が40人近く集まってくださいました。そこで『こどものために、よりいい病院を作りたい』とプランを説明したのですが、地域の皆さんからは「NO!」という返事。
理由は、病院周辺の違法駐車と歩道にあふれた自転車が、病院を大きくするともっとひどくなるからだとおっしゃる。自院の駐車場と駐輪場に収まらない車と自転車が歩道をふさぎ、登下校のこどもたちに危険な車道を歩かせていたのです。こどもの命を救うはずの病院がこどもを危険な目に遭わせていると、地域の皆さんは大変ご立腹でした。」
すぐに来院者のための立体駐車場と、それとは別にスタッフや業者用の駐車場を確保し、敷地内に十分な駐輪場を作る計画を追加して、地域住民から承諾を得ることができたという。
小児病院は一般の病院以上に地域との連携が重要だという。こどもの成長には、家族はもちろん、周りの大人の見守る目や協力が必要だからだ。
「病院はできてからがスタートで、当院はグランドオープンして4年が経過しました。
新しいという理由できれいなのは3年くらいでしょうか。これからは運用・運営方法を見直す時期に来ている。ファシリティマネジャー(伊豆氏)を採用したのもそのためです。
医療機器含めファシリティマネジメントの考え方で、『こどもにとって一番良い』状態を作り続けていきたい」と語る。
中野こども病院
中野こども病院
外観
中野こども病院
内観
中野こども病院
サイン