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3Dは医療のプロと設計のプロの共通言語

浦尾正彦 氏
順天堂大学 医学部附属 練馬病院
院長補佐/小児外科教授/医療安全管理室長


お勤めの病院が今まさに新棟を建設中で、その新棟を3DCGで見せてもらったところ、図面だけでは気づけなかった課題に気づけ、修正することができたそう。
「3Dがいいんです。他院にもぜひ勧めたい」とおっしゃる理由を伺いました。

― 現在、新棟を建設中とのことですが、先生方も図面はご覧になるのですか?

浦尾氏:もちろん見ますよ、ただね、わからない。(笑)
寸法で書かれてある3メートルという長さは知っていますが、実際のスケール感とか、そこに人が入ったらどういう感じになるのかとか、全然イメージがわかないです。そりゃあそうですよね、図面なんて見慣れてないですから。
今回の場合は、そういうのを3Dで見せていただけたので事前にいろいろなことに気づくことができました。

― 気づいた点というのは、具体的にはどういうところですか?

浦尾氏:ほとんどの人、患者さんもスタッフも通るある主要な通路が狭いことに気づけました。この病院全体の人の流れに影響のある重要な通路なので、設計の途中で広くしてもらいました。
メインホールの床傾斜にも気づけました。
病院に傾斜があるということはバリアフリーのレベルが下がるし、なおかつ傾斜の角度によっては非常に危険ですね。
また、ある部屋の壁をどうするかを考えるきっかけにもなりました。
壁があると閉塞感のある部屋になってしまうかもしれない。窓を付けたらどうなるのか?壁は半分にしてあとはカーテンにしたらどうなるのか。そういうことも3Dで試せて非常によかった。


同じ部屋の壁(左図)を、間仕切りにした場合(右上図)、一部の壁を取ってカーテンにした場合(右下図)のイメージ。3Dならこんな修正も簡単に行え、イメージを共有できる。

浦尾氏:何より、3Dだと、ここに立ったらこんな風に見えるというのがよくわかりますよね。 受付からどのくらいの範囲が見渡せるのかとか、逆に患者さんの視野はこのくらいあるとか、ここに壁があったら死角ができてしまうから駄目じゃないかとか。そういうことに気づけたのがよかった。 病院は死角があることが非常に怖い。転倒したり、ぶつかったり、そういうことがあってはいけない。でも残念ながら接触事故は少なからず起きてしまうので、だからこそ、通路の幅や傾斜や壁による死角などに設計の段階で気づけることに意味があるのです。


受付横に壁がある場合(上)と壁がない場合(下)のイメージ。
壁があると、その向こう側は死角になるため、そこにいる患者や年配者が歩いているのにも気づけない。

先日の展示会では、3Dで作った病院にVRで入れるというシステムを体験しました。 あれで見たら患者さんとの関係もわかるし、受付からの視野もわかりやすい。 目からウロコっていうのはこのことだと思いましたよ。まさに百聞は一見に如かず、でした。 病院のような専門性の高い人(医療者)と専門性の高い人(設計のプロ)がすり合わせをするためには共通の言語が必要です。 それはやっぱり3Dなんじゃないかなと思いますね。

― なるほど。ところで、病院オープン前には、どこに何があるかスタッフのみなさんはトレーニングをされるんですか?

浦尾氏:スタッフが迷うようではいけないんです、病院はね。 初めてきた患者さんが迷ってはいけないし、迷わない表示(サイン)というのが大事。エントランスから入ってきた人が「はい、こっち。はい、こっちね」って行きたいところに迷わずずんずん進んでいけないとだめなのです。 でも表示を考えるのに2次元だと難しい、どうやって見えるのかがわからないから。 表示板は躯体ができあがってからつければいいと思われるかもしれませんが、今は電子表示板がほとんどで、電子カルテとつながっているんです。ということからすると、躯体設計の時からどこに配線を置くかっていうのをちゃんと計算しておかないといけない。そうなると、やっぱり早い時期から3Dで見られるのがいいのです。 病院の設計には、精密な図面ももちろん必要だと思いますが、設計する人と病院スタッフが早い段階から3Dでプランを共有して、意見を出し合って進めていくのがいいと思いますね。 みんないい病院を作りたいと思っていますから。

― 本日は貴重なお話をありがとうございました。素晴らしい病院の完成をお祈り申し上げます。


現在の順天堂大学 医学部附属 練馬病院。
このすぐ近くに新棟を建設中。新棟が完成したら、現在の棟も改築の予定だそう。

(2018.11)