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インテリアから考えるこれからのヘルスケア「光と健康」

2019年11月19日、ACTIVE CAREセミナー「インテリアから考えるこれからのヘルスケア『光と健康』」が開催された。
ACTIVE CAREセミナーは、一般社団法人日本インテリア健康学協会(所在地:東京都渋谷区、代表理事:尾田恵氏)が主催するセミナー。第1回の今回は「インテリアから考えるこれからのヘルスケア『光と健康』」をテーマとし、医師、照明メーカー、日本インテリア健康学協会代表理事が登壇。最新の研究結果や医療施設の照明計画などを解説した。


▲会場の様子(株式会社サンゲツ 品川ショールーム内)。早々に満席になったそう。

最初に登壇した奈良県立医科大学 准教授・大林賢史氏のテーマは「室内光環境と健康問題」。夜間交代勤務者に多い病気として、肥満症・糖尿病・高血圧・心血管疾患・脳卒中・がん・うつ病・睡眠障害をあげ、動植物の体のリズム=サーカディアン・リズム(概日リズム)と光環境には深い関係があることを解説。うつ病の高齢者に3週間早朝にブルーライトを照射した結果、うつ病スコアが改善した実験結果や、日中に光を浴び続けた高齢者の数年後の認知機能が改善した例などを紹介した。

また自身が所属している奈良県立医科大学の平城京スタディで得られた寝室の照度と睡眠障害の関係を調査した結果、離床前に浴びる朝日(離床前光曝露=Pre-Awake Light/PAL)が睡眠障害と関係することなどを解説した。
大林氏は「人は地球上で進化した生物で、朝日が昇り夕陽が沈むまでの時間、太陽光を浴びるという生活を長い時間してきた。人の体はこの光の周期を覚えていて、それと異なる光の下で生活することでいろいろな障害を起こしているのかもしれない。照明器具や遮光カーテンなどのインテリアや住宅設備で光環境を制御することは健康に過ごすためにも有効だと思う。」と説明した。


▲一般的な個室の病室のイメージ(編集部作成)。
窓から光が入る環境は良いが、起床前に浴びる朝日は睡眠障害を起こす恐れがあるという。
遮光カーテンなど、インテリアでの工夫を推奨。

二人目の登壇者は、大光電機株式会社の古川愛子氏。同社の照明計画・特注設計のプロフェッショナル集団「TACT」のメンバーでもある古川氏は、これまで手掛けてきたクリニックや高齢者施設のリニューアル工事の事例を施工前後の写真とともに紹介。日本インテリア健康学協会のテーマでもある「Active Care®(アクティブ・ケア)」の考え方を取り入れてデザインしたと話した。
※参考:今回紹介されたクリニックの事例写真が掲載されています。
サクセス!インテリア>インテリア照明の最新事例紹介!照明にお悩みの際は大光電機・吹抜けキャンディーズへ:古川愛子さん編"


▲サーガディアンリズムのイメージ(編集部作成)。
このリズムの乱れが睡眠障害に繋がると、大林氏に続き古川氏も解説。

最後に登壇した日本インテリア健康学協会・代表理事 尾田恵氏は、同協会の活動を説明する一方で、「光・色・匂い・音といったインテリア要素からの刺激を軽減・低減することにより、人を健康へ導くということをより多くの方に知っていただき、『予防ヘルスケア』として役立ててほしい。」とし、「メディカル、プロダクトデザイン、インテリアデザインの3つの力でよりよい空間、より健康的な住環境を作っていけるよう、活動していきたい」と語った。


▲日本インテリア健康学協会・代表理事 尾田氏



▲セミナー後のトークセッションの様子。
右から大光電機・古川愛子氏、奈良県立医科大学 准教授・大林賢史氏、
日本インテリア健康学協会・代表理事 尾田恵氏、進行役の同協会・吉岡忠彦氏

インテリアや照明メーカーからの参加者が多く、各社とも医療施設や福祉施設への関心が高まっているようだ。
”医療とインテリア”というと病室ばかりを思い浮かべてしまうが、診察室や廊下、スタッフのバックヤードにアクティブケアの考え方を取り入れることで、患者だけでなく医療者にとっても快適な空間づくりができることがわかった。

ACTIVE CAREセミナーの第2回は、2020年3月12日に開催予定。
詳細決定後、同協会ホームページにて告知する。