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中野こども病院・内観

社会医療法人 真美会 中野こども病院は、1966年に日本で最初の民間小児病院として開業。2015年7月にリニューアルした現在の同病院を取材した。

動線の改善と3Dでのシミュレ―ション

1966年の建設当時は、病院は医療行為が滞りなく行えればよい、という考えが主流だったこともあり旧病院の内装は基本的に白。しかし、現在では医療施設への考え方も変わっており、白は緊張感を与える色と言われるようになっていたり、医療技術や機器の進化によりスタッフの動きも変わってきた。時には不便さを感じるところもあったという。
病院建て替えのプロジェクトチームに参加した看護部統括師長 森本典子氏は、
「院内が暗いこと、通路が狭いこと、スタッフ・患者それぞれに動線計画があまりなされていないと感じていて、そこを改善したいと思っていました」という。
その一例として、以前は、予防接種など元気な状態で来院した子と、罹患している子が待合で一緒にいるのが心配だったことなどを挙げた。
「新病院では予防接種は新館で対応するようになったので、元気な子も安心して予防接種を受けに来てもらえるようになりました。
救急から処置室へ直接入れる動線が確保できたのも、安心につながっています。」

  
中野こども病院のフロアマップ
同院が配布している資料から。(左から1階、2階、3階)

病院建て替えプロジェクトでは、設計段階から3Dでイメージを確認できたそうで、
「ナースステーションのカウンターの幅をどうするか、というのも3Dで見ながら相談しました。
患者の動線もイメージしやすかったですし、”こうなるんだ”という期待が膨らみ完成が楽しみでした。」という。


3Dでイメージを確認したナースステーションのカウンター

内観

病院内を案内いただいた伊豆氏と森本氏のコメントと一緒にご紹介しよう。

●光の塔


本館の中心には「光の塔」と名付けた吹き抜けを設置。
名前のとおりここから差し込む光が院内を明るくし、ガラス越しに向こう側の様子も見えるようにした。
この塔を幹に、病院全体を木にたとえ、1階は大きな動物、2階は小動物、3階は鳥をデザインのテーマにしている。

●エントランスの自動ドア


ボタンを押して開けるタイプの自動ドア。
こどもが勝手に出て行くと危険なので、ボタンは一般の自動ドアより高いところにある。
「大成建設が特注で用意してくれました」。

●本館・外来待合室


待合室から見える診察室の扉には動物の“おしり”だけが描かれている。
「『だれのおしり?』の答えは診察室に入るとわかるよ」という仕掛けで、
少しだけ診察室に入るのが楽しみになるかも?



待合室の一角にもうけられている授乳コーナー。
わかりやすくスペースが設けられている上に、カーテンで仕切れるので安心。



待合室にはお絵かき用の紙とクレヨン、絵本などを設置。
穏やかに楽しく順番待ちができますように。

●トイレ


入院中にトイレトレーニングをする子もいるため、こども用トイレはにぎやかで楽しげ。
動物や鳥たちの足跡は「ココに立ってね」のサインでもある。
恥ずかしがり屋さんのために、個室も設置(右)。
心配なときは見守ってあげられるよう、パーティションは大人がのぞける高さで設置。

●隔離室と処置室


(左)救急用の出入口を入ってすぐにある救急隔離室。
泣き声の激しい子はここに入ってもらって、不安と泣き声の連鎖を防ぐのにも利用
(右)処置室は救急隔離室からも待合室からも入れる場所に設置。

●病室


病室のドア。ここは3階なので各扉には鳥の絵が書かれている。



この部屋には男の子が3人、女の子が1人ここにいます、というサイン。(名前は書かない)
災害避難時に病棟担当でなくても人数把握ができる。
退院するときに、タグの裏面に名前と日付を書き込んでプレゼントするそう。

●プレイルーム


プレイルームは入院中のこどもがリフレッシュする場所だが、
看護師・保育士がこどもの回復状態をチェックし、退院時期を探る場所でもある。
「どれも広くて明るくなったのでうれしい」と森本氏。病棟毎に1カ所設置。

●階段室


階段の手すりは、大人用とこども用を設置。

●図書コーナー


スタッフステーションから見える場所にある病棟内の図書コーナー。
お母さん・お父さんとスタッフが共有できる貴重なスペース。
”光の塔”からの日差しを受けながら少し解放的な気持ちで話をすることで、
悩みを聞いたり、励ましたり、一緒に喜んだりできる、そんな関係を築く場所だという。

●ラウンジ


シャワールームと併設したラウンジは付き添いの家族のために新設したスペース。
シャワーを浴びて身支度をして、洗濯が終わるまでゆっくりお茶を飲むことができる。
「たった30分かもしれませんが、病室から離れてひとりになれる時間を作ってあげたかった」と森本氏

●渡り廊下


病棟(本館)からラウンジ(新館)へ行くにはこの渡り廊下を通る必要がある。
ほんの数メートルだが、家族や職員が気持ちを切り替えるための時間になるそう。

●新館

新館に併設の病児保育室と、オフィス機能、スタッフ用の食堂などを設置。


本館と道路を挟んで向かい側にある新館のエントランス。
同じカラー、同様の曲線の庇で本館と一体感を出している



病児保育室への通路(左)と、予防注射専門外来の待合室