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介護施設&クリニックの照明

お話をうかがった方

古川愛子
大光電機株式会社 住宅デザイン部 スタッフリーダー/照明士

大光電機株式会社に入社後、大型施設のチームを経て現在は住宅チームに所属。現在はクリニックや高齢者向けの住宅を担当することも多い。吹き抜けキャンディーズとしても活動。


― お名刺を拝見すると、古川さんは住宅チームに所属なんですね。なぜ介護施設やクリニックも担当されるようになったのでしょう?

古川氏:住宅の着工数が減っており、ハウスメーカーやビルダーがサービス付き高齢者向け住宅など介護施設を手掛けるケースが増えています。
これまで住宅でお付き合いいただいていたところから、お声がけいただき、介護施設やクリニックも手掛けるようになってきました。


高齢者向け住宅の居室イメージ
(左:介護付老人ホーム、右:サービス付高齢者向け住宅)

― 住宅と介護施設では照明計画は違いますか?

古川氏:介護施設には居室空間と共用空間があります。
居室部分は、一般の住居とそれほど大きな違いはありません。医療行為が行われることもありますが、調光機能のあるLED照明が主流なので、色も明るさも調整できますから特別なことをする必要はないですね。

住宅と違いがあるのは、廊下や食堂、イベントスペースなど共用スペースがあることで、共用スペースの照明には高齢者の身体機能に配慮した計画が必要です。
たとえば、高齢者は網膜の縮小が鈍くなりまぶしさを感じやすいので、極端な明暗差をつくらないようにしなければいけません。
また、年齢とともに空間認知力が低下するので、例えば、食堂の方向を光で認知しやすくするとか、部屋の標札をしっかり照らして見やすくするとか、そういった工夫も必要です。


高齢者向け住宅のフロアイメージ。食堂など共用スペースが広く取られている

介護施設はチェーン展開されているところが多く、各社内装のガイドラインがあり、それに沿って統一されたコンセプトでつくられることが多いですね。

― 医療施設の照明計画も担当されると伺いました。

古川氏:私が担当するのは個人経営のクリニックで、照明を含めインテリア全般への意識が高い先生からのご依頼が多いです。
クリニックと一言で言っても、歯科、内科、皮膚科など科目によって求められる光は異なるため、ヒアリングは大切です。
受付、診察室、処置室、バックヤードなどいろいろな部屋がある上に、部屋によって求められる照度が異なるのでその調整も必要。JISの照度基準によると待合室と診療室では照度が4倍くらい異なります。患者さんももちろんですが、スタッフは照度の落差が大きいところを1日に何度も行き来されるので目の負担は大きくなります。明るさのバランスも検討が必要です。


JISの照度基準(保健医療施設)

また、医療施設では照度と同じくらい色が重要です。最近は、受付まわりは電球色、診察室や処置室は白い光というパターンが多いですね。
審美歯科は歯の白さがわかりやすいことが重要ですし、皮膚科はシミや発疹を見分けられる明るさが求められます。小児科は注射や点滴の針を入れるのが難しいそうで、白ければ白いほどいいとおっしゃいます。


「お肉がぷくぷくで静脈が取れない(見えにくい)」赤ちゃんの腕。
小児科は一般内科以上に明るさが求められるという

ただ、部屋全体を機能的な光と同じ色にする必要なく、手元には白い光をしっかり落としておいて間接照明を温かみのある色にする、そんな方法もありだと思います。


照明の組み合わせイメージ
左:全体・スポットとも電球色/中:全体は電球色、スポットは昼光色/右:全体・スポットとも昼光色


― 先日のセミナーでは脳神経科クリニックのリニューアル事例を紹介されていました。歯科や皮膚科、小児科と違う点はありましたか?

古川氏:脳神経科は他の科目と比べて不安な気持ちで来院する人が多い科目なので、光で患者さんに安心感を与えるという大きな役割がありました。
診察室では、先生は患者さんの表情や顔色の変化を見ながらコミュニケーションを取られるので、表情が見えやすい照明が求められます。かといって、強い光では不安感をあおってしまったり、圧迫感を与えてしまうので、”ちょうどいい”光を探り提案しました。



古川さんが担当した脳神経科クリニックの診察室のBeforeとAfter
(インテリアプランニング/画像提供:株式会社 菜インテリアスタイリング

― クリニックのリニューアルは、クリニックの経営にも影響がありそうですね。

そうですね。 変化による患者数増が見込めるので、照明だけではないですが、インテリア含めリニューアルの案件は増えています。
照明計画をする上では、どういう診療科目があって、どういう部屋があり、どういう処置を行うのか、また保険外治療をするのかも重要なポイントです。そういう点をお伝えいただけると計画がスムーズになります。

受付まわりで物販を行うなら、商品をわかりやすくきれいに照らす照明が必要です。
大きな道路沿いで中が丸見えのクリニックでは積極的に壁を照らして、ファサード的にPR効果を狙うこともあります。
そういう部分の考え方は、商業施設に近いかもしれません。


歯科医の受付まわりのイメージ
プロ仕様の歯ブラシや機能性の高い歯磨き粉などを販売している歯科は多い。

いろいろな要素を持ったクリニックですが、患者さんの心理に寄り添っていけるというのは照明の持つパワーだと思います。
内外装のリニューアルの際には、ぜひ照明もリニューアルして欲しいですね。

古川さんからヒトコト

大光電機は住宅にも店舗にも強い照明メーカーです。
それぞれの分野で培ってきたノウハウで、クリニックに必要な、安らぎを与える光、商品を見せる光、機能的な光などあらゆる状況にとってのベストな照明をご提案いたします。
ハウスメーカーの断熱施工に対応した照明器具、演色性の高い照明器具も多数取り揃えておりますので、ぜひご相談ください。


医療施設にオススメの演色性の高い大光電機の「Quality plus Q+」シリーズ ”血液の微妙な赤色の違いをも表現し、確かな医療に貢献する”という(同社Webサイトより引用)
同等の住宅用「ときめきシリーズ」は、顔色良く見えるため介護施設の洗面台にオススメだそう


(取材:にっぽんの病院編集部/2020/01)