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患者が見た医療施設のデザイン
1.病室とサイン計画

【執筆者紹介】
岩崎義弘氏
株式会社PPnR 代表取締役

はじめまして。株式会社PPnRの岩崎義弘です。2017年に腎臓を患い、患者歴3年のデザイナーです。
職業柄、モノゴトに課題を見つけて改善案を考える習性があり、このたびご縁あって医療施設を利用していて気づいたことを述べさせていただくことになりました。
全3回、患者目線・デザイナー目線で医療施設などの課題と、こうなれば良いなを考えたいと思います。

病室のデザイン

一般的な病院、病室のイメージを聞かれると、多くの方は「白」と答えるのではないでしょうか? 全体的に白っぽく、出入り口やベッド、家具なども画一的で、カーテンで仕切られただけのベッドはプライベートなどほとんどない、そう遠くない、一般的な病院の印象です。 病院という特性上、搬入する医療機器の数が多く、大きさなども規格統一されていること、防災上の観点から難燃性のものを導入しなければいけない、などの理由からこうなっています。

短期入院であれば緊張感があるので病室の番号を毎回確認しますが、同じ病院で入退院を繰り返したり、長期入院していると、無意識に入室するようになります。 患者さんだけでなく、ご家族や中には看護師さんでさえ、病室やベッドを間違うことがあり、居合わせた患者さんと鉢合わせて、お互い気まずい思いをすることも。 眠っているときなら気が付きませんが、着替えや食事の最中だと、お互い恥ずかしいし驚いてしまいます。 わたしも入院中何度か経験しました。

患者からの提案

一般的な病院、病室のイメージを聞かれると、多くの方は「白」と答えるのではないでしょうか? 全体的に白っぽく、出入り口やベッド、家具なども画一的で、カーテンで仕切られただけのベッドはプライベートなどほとんどない、そう遠くない、一般的な病院の印象です。 病院という特性上、搬入する医療機器の数が多く、大きさなども規格統一されていること、防災上の観点から難燃性のものを導入しなければいけない、などの理由からこうなっています。

①扉に個性を
私が一番重要性を感じたのは病室ごとのサイン計画です。 小児病棟でドア毎に動物のイラストを描くなど工夫されているのを見かけますが、そのようなものです。

部屋を間違う理由は、病室の入り口がどれも同じで、小さめの部屋番号とネームプレート程度ですが、(注:個人情報にあたるためネームプレートのない病院も増えてきています/編集部)例えば、ここにわかりやすく大きな文字でアルファベットを掲載するというのはどうでしょう。1文字だと緊急時に聞き間違えることもあるので「Apple」「Baseball」「Cake」といったような単語とイラストで部屋に名前をつける、入り口の床付近に色を付けてもいいかもしれません。
とにかく目に入るところに大きくサインや色を入れてみるだけでも、病室の間違いは減ると思います。

②室内に個性を
最近は木目や暖色系の色を取り入れた病室も増えてきましたが、まだまだ白っぽく単調な色使いというところも少なくありません。
しかし、壁や天井すべてを塗り替えるとなると大変な手間とコストが掛かります。
せめて、目線や腰高のあたりにほんの少しだけでも色、柄、単純な線などが入れば、部屋自体の印象も変わりますし、部屋ごとに色調を変えることで、入室後に間違えたかどうか気がつきやすくなります。

ベッドサイドに患者さんの好きな絵やお気に入りのグッズを置き、限られたスペースを患者さんらしくすることも、間違いをなくすことにつながるかもしれませんね。

医療施設のサイン統一化

最近の病院では廊下や壁、天井付近にピクトグラムが導入され、大変わかりやすくなりました。
しかし医療施設のように、同じような色形のものがずらりと並んでいるところでは、サインがあってもそもそも自分がどこにいるのか迷うこともあります。
多くの場合は駅やショッピングモールと同じようなサイン計画ですが、本当にそれでいいのでしょうか。
病院だからこそのサイン設計があるのではないでしょうか。

病院ごとにサイン計画が異なることも、伝わりにくい原因かもしれません。
ユニバーサルデザインも現在では一般的ですが、もう一歩進んで、医療や福祉施設も公共施設のようなサイン計画ガイドライン(色、フォント、大きさ、ピクトグラムなど)の策定を検討する必要があるのではないでしょうか?
特に医療施設にはいろんな疾患をお持ちの方が来られますので、色だけで識別するのは困難な場合も多く、やはりピクトグラムやフォント、大きさなどでもっと工夫する必要があると感じています。


多くの場合はデザイナー(設計者)と医療従事者の間で進んでしまい、患者さんは出来上がった施設を利用するだけです。
結果として、運営開始後にわかりにくいからとサインが追加・変更され、よりわかりにくく統一感のないサイン計画、導線計画になりがちです。
たとえば、患者さんがサイン計画に意見を出せる機会を設けて、デザイナー、医療従事者以外の意見に耳を傾けることはその後の運営にも関わってくることだと思います。


トイレのピクトグラムいろいろ
①宿泊施設 ②病院 ③文化施設 ④公共トイレ ⑤小児病棟 ⑥オフィス ⑦3D医療施設デザイナー収録素材
(※編集部のプライベート写真より)

最後に

サインの改善計画には終わりはありませんし、誰にでも通用する答えというのもありません。
ただ現在の画一化された施設においてサインの改善は、患者とその家族、また医療従事者にとっても、間違いをなくし、負担を減らすためには重要です。
サイン計画の見直しは利用者に近いところですが、建て替えのように労力を要しない、比較的改善しやすいところではないでしょうか。