外来診療に加え入院設備と透析治療室を完備する八木クリニックの設計者にお話を伺いました。
お話をうかがった方
戸矢崎 弘美氏 インテリアプランナー
(略歴)
1983年 武蔵野美術大学大学院工芸工業デザイン科インテリアコース修了
三輪正弘環境造形研究所を経て、THワークス設立、
現在(一社)日本インテリアプランナー協会 東京 理事 総務委員長
「私の経験がこれから同様の施設を設計しようとする方の参考になれば」と、当時の図面やお写真もご提供くださいました。
一日中院内を移動するスタッフの負担を軽減する施策として、受付・カルテ室・診察室・検査室のバックヤードにスタッフ専用の通り道を作り、その先にスタッフルーム・事務室を配置した。医師や看護師ら医療スタッフは患者や付き添い人の前を通らず移動ができ、作業動線をシンプルに短縮化できたという。
シンプルにしたのは医療スタッフの動線だけではない。泌尿器科特有の排尿に関する検査は排水設備が必要なため、トイレに設置されることが多いが、診察室の並びに設けた検査室内で行えるようにして、患者の移動距離も短くすることができた。
また、手術とその前後に利用する部屋も横並びの位置に配置した。
透析治療は週に3度、3~4時間過ごす場所となるため、できるだけ快適に負担なく過ごせるようにと考えた。2階に透析治療室を置いたのも、そんな理由からだという。
部屋の3面には開けやすい窓を配置し、スタッフステーションの上に大きな丸い吹き抜けを設け、太陽光による自然な明るさを確保した。同時に、どうしても充満してしまう独特のにおい対策として、外気を窓から取り込んで吹抜けから外へと送り出すという機能も持たせている。
また、透析治療中にテレビを見て過ごす人が多いため、テレビの位置も検討を重ねた。ベッドで無理のない姿勢でテレビを見られるよう、垂れ壁をつけてテレビを設置、イヤホンジャックをベッド脇にもうけた。照明の位置もまぶしくないように設置している。
さらに、透析治療後に次の予定までの時間を過ごしたりができる休憩スペースを設けた。透析治療後に具合が悪くなった人が横になることもできる。
横になるスペースはベッドではなく不要な時は片づけてしまえる布団を採用。横になっている人との目線の高さを考慮して、畳に掘りごたつ式のテーブルとした。
透析治療では大量の水を使用する。通常の配管ではつなぎ目に水垢がたまることがあるため、特殊な配管にするなど、清潔な水を提供できるようにしている。