八木クリニックは、外来診療に加え、透析治療室と入院設備を完備するクリニックとしては大型の施設です。
外観はいわゆる「病院」とは一線を画したものとなっているのが特徴。
院内は医療スタッフの意見を伺うことはもちろん、同様の施設や関連機器メーカーのショールームを見学し、ご自身やご家族の入院経験に加え、これまで手掛けてきた飲食店や商業施設、一般住宅での経験も踏まえて設計されました。
お話をうかがった方
戸矢崎 弘美氏 インテリアプランナー
(略歴)
1983年 武蔵野美術大学大学院工芸工業デザイン科インテリアコース修了
三輪正弘環境造形研究所を経て、THワークス設立、
現在(一社)日本インテリアプランナー協会 東京 理事 総務委員長
「私の経験がこれから同様の施設を設計しようとする方の参考になれば」と、当時の図面やお写真もご提供くださいました。
「医療施設は診療科目が違うと設備が違うし、それによって必要な部屋の種類や、同じ部屋でも必要な広さが異なります。
こちらのクリニックの場合は、なによりもまず、透析治療に通う方がいることが大きなポイントだと考えました。透析患者さんは週に3回は病院に通わないとけません。ですから、外観は楽し気な雰囲気にした方が抵抗なく通えるだろうと考えてデザインしました。」
参考にしたのは、ショッピングセンターやアミューズメント施設。ある程度存在感を出すことで、近くを通る人に”ここはなんだろう”と気づいてもらい、困ったときには”あそこ病院だったね”と思い出してもらえるようにとも考えた。
冒頭の写真の、一見病院に見えないカラフルな外観にはそんな思いが込められている。
実はこのクリニック、上からみるとサッカーのリフティングをしている形になっている。
「院長先生がサッカー好きだからというのを理由に、ちょっとした遊び心も忍ばせました。」
(※いずれもクリニック完成当時)
診療科目: | 泌尿器科/内科/(人工透析)/一般病床 |
部屋種類: | |
1階: | 受付・待合、外来診療室×2、手術室と前室、X線検査室、厨房施設、事務室、スタッフエリアなど |
2階: | 透析治療室(設備室)、病室、スタッフステーション、リネン室、デイルーム、浴室など ※病室内訳: 6人室×2、3人室×1、個室×2、回復期病床2床(計19床) ※透析治療室:24床 |
スタッフ人数: | 医師1名、医療スタッフ:12名、事務・経理:3名、栄養管理士:1名、調理担当:5名 |
■泌尿器科とは
泌尿器科とは尿の生成・排尿に関係する臓器(腎・尿管・膀胱・尿道)と、男性特有の臓器(精巣・陰茎・前立腺など)の病気を取り扱う診療科目。関連する検査項目は、血液検査、画像検査(レントゲン、超音波、CT、MRI、尿道造影など)や膀胱鏡(膀胱の内視鏡検査)など。腎臓疾患患者のために、透析治療室を完備している場合がある。
「病院ってできれば行きたくないし、中の雰囲気がわからないから敷居が高いと思うのです。
中に入ってみたら、暗くてジトっとしてるし、具合悪そうな人が多いし、待合室ちょっと汚いし…みたいな、なんとなくの印象で病院が苦手な人は少なからずいると思います。」
そのネガティブなイメージを払拭するために、待合スペースにカフェのようなコーナーを設け、外からその様子が見えるようにした。
院内は、患者、医療者ともに、それぞれの移動距離が短くなるように設計したという。
「室内はL字型のシンプルなレイアウトです。車いす、ストレッチャーやカートが行き来するエリアの廊下を直線にして、移動しやすくしました。」
エントランスから入って突き当りの先がスタッフエリアになっている。
外来診療エリアのサインは、診察室、検査室という表記をなくし、すべて通し番号のみにして、「●番の部屋へ」と案内できるようにした。
「大きな文字で表記できるので、遠くからも見やすくなったと思います。」