トップ  >  コラムと連載  >  病院の音と声問題をなんとかするプロジェクト  > 透析治療室の音をなんとかする方法  >  番外編 透析監視装置の音・計測レポート


音のプロに聞いてみた~透析治療室の音をなんとかする方法(全5回)

番外編 透析監視装置の音・計測レポート

※今回は番外編として、透析監視装置を実際に稼働して、その稼働音を測定させていただいたので、そのレポートです。

ご協力いただいたのは、大阪電気通信大学。
四条畷キャンバス・8号棟にある医療福祉工学科の実習室で、2000年型1台のみ稼働時と、2010年型と2台稼働時の音を計測させていただくことにした。(2021年冬に計測。その直後、最新機種に交換されたそうです)

実習室は、学生用の実習設備のため、本来別室にある透析液供給システム(透析液を作る機器類)が同じ室内にあり、透析監視装置を本稼働するには、透析液供給システムも稼働しなければならず、残念ながら、透析監視装置のみの稼働音計測はかなわなかった。

計測中、離れていると、透析監視装置の音はそれほど大きくないように思ったが、これはまさに透析液供給システムの稼働音によるマスキングで、ベッドの患者と同じくらいの距離に寄って聞いてみるとはっきりと聞き取れる音だった。
ずっと鳴っているブーンという音と、ときどき異音が聞こえる。これは気になりだしたらしんどうそうだ。

計測は、透析室と同様に透析監視装置の横にベッドを置いた状態を作り、透析監視装置の前後左右と上それぞれ1mの位置での音を計測した。
それを1台のみ稼働時と、2台稼働時(ベッドの左右で透析監視装置が稼働しているとき)とを計測させていただいた。

以下、小野測器社からいただいたレポートをもとに報告する。

「4.1台稼働時 透析監視装置①付近」と「5.2台稼働時 透析監視装置②付近」の差分が隣の透析装置の音に近い値だと考えられる。透析室など複数台が同時に稼働したときはこの値が(多少の距離による減衰はあるものの)加味されていくことは容易に予想される。


測定場所
大阪電気通信大学 医療福祉工学部 医療福祉工学科(四條畷キャンパス 8号棟2階)の実習室


▲大阪電気通信大学の透析治療実習室。グリーンのエリアは実機を設置した手術室のモックアップ

音環境確認
・空調の音が大きかったので、計測中は停止した。
・実際の透析治療室では、透析液供給システムは別室に設置されており、ほとんどその音の影響は受けないが、実習室では同じ室内に設置されており、その音も含めた計測となった。

使用機器など
透析監視装置:2台使用  ①2000年型/一体型、 ②2010年型/①の後継器 使用機器:騒音計 枕元 LA-7700/その他 LA-7500(いずれも株式会社小野測器製)

測定方法
・透析監視装置を①1台のみ稼働時と②2台稼働時でそれぞれ計測
・計測位置は、透析監視装置から1m離れた5カ所と、患者の枕元の計6カ所。

計測結果

1.枕元

稼働時100Hz以上に広く差が見られる。125Hz(位置)は顕著に大きい。

枕元測定オーバーオール値(*)
A111(暗騒音)44.1dB(A)
A112(透析液供給システム非稼働)52.1dB(A)
A114(2000年式のみ駆動)51.6dB(A)
A118(2010年式・2000年式駆動)54.2dB(A)


2.透析液供給システムの音と暗騒音の比較
※透析液供給システムの音は近傍で測定/暗騒音は、ベッドわきでの測定のため参考程度

100Hz、125Hzが大きく、また1000Hz、1250Hzも大きい(位置)。
やはり透析液供給システムの影響は大きい。


3.空回し時(透析監視装置は稼働なし)

本稼働5点測定オーバーオール値(*)
正面50.7dB(A)60.0dB(Z)
左面53.5dB(A)60.5dB(Z)
背面(棚、壁あり)52.6dB(A)60.0dB(Z)
上面49.3dB(A)56.5dB(Z)
右面(ベッドあり)49.5dB(A)57.7dB(Z)


4.1台稼働時 透析監視装置①付近

本稼働5点測定オーバーオール値(*)
正面50.7dB(A)57.4dB(Z)
左面53.2dB(A)59.1dB(Z)
背面(棚、壁あり)52.0dB(A)60.1dB(Z)
上面49.3dB(A)59.6dB(Z)
右面(ベッドあり)49.7dB(A)56.2dB(Z)


5.2台稼働時 透析監視装置②付近

本稼働5点測定オーバーオール値(*)
正面51.3dB(A)57.8dB(Z)
左面54.9dB(A)61.0dB(Z)
背面(棚、壁あり)60.4dB(A)64.8dB(Z)
上面54.9dB(A)61.8dB(Z)
右面(ベッドあり)52.8dB(A)60.1dB(Z)


*オーバーオール値:分析されたパワースペクトルの各周波数帯域パワーの総和(詳細→

(株式会社小野測器)
電子計測機器、電子応用機器、電子制御装置及びその関連機器などを製造・販売するメーカー。
今回のレポートは計測にご協力いただいた小野測器社からの資料をもとに構成しています。

(にっぽんの病院編集部 2022/08/08)


音のプロに聞いてみた ~透析治療室の音をなんとかする方法

 第1回 心地よい音とは? ~心地よい音と不快な音~
 第2回 アナログ音とデジタル音はどう違う? ~Web会議の音声がしんどいのはなぜ?~
 第3回 音を変える方法 ~大きさを変える方法、音色を変える方法~
 第4回 機械はなぜ音がするのか?
番外編 透析監視装置の音・計測レポート
 第5回 「音を設計する」~透析治療室内を快適な音環境にするには?~